バラバラな紙片

今日は。古賀と申します。
本来の担当順でいくと25日に書くべきだったのですが、諸事情あって更新が大幅に遅れてしまいました…。

 さて、雑誌「Fold」の編集部は、お互いに趣味や関心の異なる15人弱の人々の集まりです。最初の打ち合わせ時に、自己紹介をかねて各自がこれまで読んできた雑誌や、最近興味のあることなどを紹介しあったのですが、驚いたことに15人中誰一人として関心領域が重なりあう人がいませんでした。そんな見事なまでにバラバラな、偶然に同じ場所に居合わせただけの人たちが、共同で雑誌を制作することになったとき、はたしてどんなことができるのか? いまや個人が編集・執筆・デザインをして、雑誌や同人誌をたった1人で作ることも可能なわけですが、だからこそ、雑誌「Fold」では(特定のジャンルや趣味判断のような)共通の前提を持たない多数の人々の集まりからしか生まれないような実践をしていきたい、と思っています。

 そのひとつの試みとして、「Fold」誌ではバラバラなものをバラバラなまま寄せ集めるために、紙製フォルダー(タトウ、ポケットフォルダーなどと呼ばれている)という形式を採用する予定です。基本的に書物や雑誌の場合には、表紙から背表紙まで、最初のページから最後のページまでが単線的に並んだ一冊の冊子体として綴じられていることが前提となっています。それに対して「Fold」では、文字通り、フォルダのなかにいくつかの冊子や、数枚の大小異なる紙片を封入することで、複数のものが同時に併存している状況を構築してみるつもりです。そうすることで、互いに関連しないと思われていたものどうしが緩やかに結びついたり、異なる視点から見えてくるようなことが起こるといいのですが。

 また、このフォルダーという物質的・形態的な側面のみならず、コマプレスではその紹介文にもあるように、駒場キャンパス内の設備(スミ1色刷のステンシル印刷機や、断裁機、製本機など)を転用した、身軽で小規模な印刷・出版活動のモデルを試案することも視野に入れています。このように、コンテンツの執筆・編集から印刷物の流通・販売の経路まで、その生産過程の一連のサイクル自体をデザインすることが、いま改めて出版活動を展開する場合に考えなければならない課題のひとつではないでしょうか。

 といったようなことを考えていた矢先、ジュンク堂新宿店で新雑誌「りたーんず」を手に入れ、そのバラバラな紙片がジップロックされたあり方に、背中を押される思いがしました。コレです→ http://kr-14.jp/kr-14web/2009/04/416.html