バタイユ『ドキュマン』総目次大公開

 今日は、komapressのふりをしているid:saebouです。

 我々コマプレスは田中純先生のゼミの学生なので、なんと日々雑誌『Fold』を作るかたわら、授業でエディトリアルデザイン研究などという大それた試みをしています。

 で、第一回のエディトリアルデザイン研究課題はジョルジュ・バタイユ(『エロティシズム』を書いたあの人ですね)が編集に関わっていた雑誌『ドキュマン』(Documents)だったのですが、編集メンバーでバタイユ研究をしている大池君がなんとこの雑誌の日本語版総目次を作ってくれました。この雑誌はシュールレアリスム関係者のイっちゃった文章と考古学や文化人類学の世界にいる研究者の真面目な文章を同時に載せるというすごいものだったそうで、全然バタイユのことを知らない人でも目次を見ているだけで興味深いと思いますし、またシュールレアリスムに興味ある人にとっては学術的に価値があるものだと思うので、このまま我々コマプレスメンバーだけで見て面白がっているのはもったいないと思い、pdfにして公開することにしました。


Documents 総目次(pdfです)


 田中先生もブログでおっしゃっていますが、なんと1930年の最初の巻に、日本の考古学者である中谷治宇二郎がフランス語で投稿しています。「中谷治宇二郎?誰それ?」という方もいらっしゃると思いますが、この人は雪氷学の権威であるかの有名な中谷宇吉郎博士の弟で、考古学の世界では結構有名な方だそうです。


 私事で恐縮ですが、id:saebouは北海道の雪深い田舎の出身で、その関係で東京で雪氷学関係の社会教育ボランティアなんかをやったりしており、中谷宇吉郎先生の大ファン(!)です。中谷宇吉郎は雪の結晶の形成に温度や湿度がどのように関わっているのかを明らかにし、人工雪を世界で初めて作った人で、お星様に名前がついているくらい有名な学者なのですが、ここ数年、『水からの伝言』のようなトンデモ科学の本のせいで、中谷宇吉郎がものすごい苦労をして打ち立てた業績が一般市民に理解されなくなってしまっている感があるのはとても悲しいことだと思っています(雪の結晶の実験をしていると、「これって『ありがとう』とか言うと綺麗な結晶になるんですよね?」と真顔できいてくる人がいるので、サイエンスリテラシーボランティアとしてはとても悲しいです)。


 …ところが、Documentsの目次を見ていると、トンデモ科学のせいで大迷惑を被っているお兄さんを持つ中谷治宇二郎と、マルセル・グリオールのような今ならトンデモ学問と批判されそうな手法で研究をしていた学者(グリオールはとても業績のある学者ですが、アフリカのドゴン族の人たちのシリウス神話についてかなり歪曲した内容を報告して今では批判されている人です)が並んでいるので、なんだか感慨深いものがあります。Documentsはトンデモ学問とシュールレアリスムと真面目な研究が切り結ぶ、なんだかすごい雑誌だったのですね…


 …と、いうことで、今後もこのページにどんどんエディトリアルデザイン研究の資料をアップしていきたいと思います。皆さん、どうぞよろしくお願いします。(北村)